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見学の興奮も冷めやらぬ中、國岡社長は続けて、商品のブランド化に対する熱い思いを語ってくれた。骨切りされたハモはパック詰めして商品化しており、「のぞみハモ」としての自社ブランド化や、それを広くPRするためのネット販売にも力を入れている。
「のぞみハモ」は、「天然活け締めのハモのみを最新技術で丁寧に骨切りした、高品質なハモを提供したい!」という思いから立ち上げた自社ブランドで、活けハモを基本に、照り焼きハモやハモフライ、湯引きハモ、炙りハモなど、商品ラインナップも多彩だ。
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地元漁業の発展に貢献するために
そして現在、さらに地物に特化したこだわりの商品「白金(しろがね)ハモ」も開発中だ。いわゆる6次産業化として地域全体を盛り上げていくためにも、地元泉州沖の天然ハモのみを使用し、地元ブランドとして確立していきたいと語る。
“今は地元の漁師さんと個々にやりとりをしていますが、ゆくゆくは地元の漁協とも連携して地元ブランドを確立し、もっともっと活気ある尾崎の町にしていくことが私の目標ですわ。”
と國岡社長。商品のブランド化などに関しても、会社レベルで発信するだけでは限界があり、やはり地域一体となった取り組みなくしては、地元漁業全体の盛り上がりは難しいと語る。
“大阪、特に泉南地域には、例えば北は岸和田市から、南は岬町までの範囲内だけでも、大小さまざまに、ようさん漁協がある。各漁協内での取り組みだけど違うて、将来的には南大阪の漁協同士の横の連携をより強化するための連合組織が整ったらええなぁ思うてますわ。そしたら南大阪はもちろん、大阪全体の漁業がもっと盛り上がるんとちゃうかな。”
取材に応えてくれる國岡社長の言葉ひとつひとつからは、自社の利益追求だけでなく漁業界全体の発展のために前向きに取り組む、そんな姿勢を強く感じた。
骨切り機を駆使した「のぞみハモ」を食す
「株式会社のぞみ」をあとにし、次の取材先に向かっていると國岡社長より一本の電話が入った。「さっきハモを渡すの忘れてしもたわ。せっかくやから持って帰って食べて」との嬉しい連絡であった。ということで、お言葉に甘えて、お土産としてありがたく頂戴させてもらった。ちなみに取材をしたのは12月。
「この時期、冷凍モノやからな、湯引きじゃなくて鍋や天ぷらがオススメかな。夏場、特に梅雨明けの7月頃はもっとうまくてびっくりするで。また今度シーズンの頃においで」と國岡社長は話してくれた。
帰宅してさっそくハモ鍋にしていただいた。まず一口目、何よりその柔らかな食感に素直に驚いてしまった。最新の機械で骨切りを施したその身は、当然だが小骨が気になる嫌な感じなどはまったくない。まさに「ふわふわ、ほろほろ」なのである。そして二口目、柔らかい口あたりの中にも、ほどよい弾力があって肉厚感のある食べ応えはしっかりと得られる。このしっかりとした食感は活け締めだからこその証なのだろう。
取材時、國岡社長が「ワシの2歳の孫も好きでよう食べとるわ。なんせ骨切りがしっかりされとるから、孫みたいに小さい子どもにも自信を持って勧められるねん」と話してくれたエピソードを思い出しつつ、口の中のハモを頬張りながら「ふむふむ、なるほどそういうことか」と納得した。
「せっかく取材してくれたんやさかい、味見して」と言ってくれた、サービス精神あふれる國岡社長。繋がりの深い地元漁師さんをもっともっと応援したい思いを、経営者ならではの目線や、また縁あってこの町に移り住んだ者だからこその目線で、実現に向けて取り組み続けたいと語ってくれた。
“地元の漁師さんが喜んでくれることや、漁業の発展のためやったら、なんでも貢献したいと思ってます。うちの加工場を提供してもええですし、作業場や倉庫として使ってくれてもかまへん。個人同士の取引とはまた違って、組織全体を動かしたり変えていったりすることはなかなか難しいことやけど、やっぱりそこを目標にせんとね。自分の会社のことだけを考えてたら業界は発展せえへんし、業界が発展せんと結局は自分たちの首を絞めることになるさかい。”
そう力強く語ってくれたことを、取材させてもらったその日の夜、ふかふかのハモをいただきながら思い出した。
〈写真提供〉※1-2 株式会社のぞみ
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