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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

岸和田発、生のシラスを
漁港で味わえる幸せ

2015.10.28

最寄り駅:南海本線 蛸地蔵駅

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シラスは、卵からかえって間もないイワシの稚魚。湯がくと白くなることから、そう呼ばれているそうだ。釜揚げや、ちりめんに加工されたシラスは私たちの食卓にもよく並ぶ食材だが、生のシラスはおいそれとは食べられるものではない。
イワシは魚へんに弱いと書く“鰯”の文字で表されるほど鮮度が落ちるのが早く、ましてやその稚魚となると、生のままでは水揚げされた場所以外ではなかなか流通しないからだ。

ところが岸和田に、この生シラスが丼で多ベられる店があり、話題を集めているという。岸和田で生シラスが食べられるとは一体どういうことなのだろう?いや、それよりも、生のシラスをお腹いっぱいに食べてみたい!
そんな気持ちを抑えきれず、さっそくそのお店「泉州海鮮 きんちゃく家」へと向かった。

漁師たちの集う店が、クチコミで一躍人気店に

あまり知られていないことだが、大阪湾は1年を通してシラスがたくさん獲れる好漁場。しかしこれまでは、漁師から直接、和歌山県などの加工業者の手に渡り、大阪で水揚げされることが少なかったそうだ。
そんな状況を一変したのが、昨年3月、岸和田漁港地蔵浜に開設されたシラスの入札場。シラスを競りにかけて販売するため、大阪の漁師が獲ったシラスのほとんどが、ありがたいことに、ここで水揚げされるようになったのである。

「泉州海鮮 きんちゃく家」は、そんなシラスの入札場の目の前に、今年3月にオープン。もともとは、漁港で働く人たちや競りに訪れる加工業者にお腹を満たしてもらおうと、入札場を運営する大阪府鰮巾着網(いわしきんちゃくあみ)漁協が開いたお店だそうだ。

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ところが、いざオープンしてみると、地元の人のクチコミやインターネットで評判が広がり、今ではほとんどのお客さんが一般の人たちに。お昼時には店の前に行列ができるほどで、漁業関係の人たちは、店を利用するのを遠慮しなければならないぐらい繁盛するようになったという。

そして今年の9月には、ナニワのカリスマ添乗員 平田進也さん主催の大阪集客塾が企画している「第1回大阪サラメシグランプリ」で、お店の生シラス丼が堂々の1位を獲得。

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この「大阪集客塾」は、大阪でホテル・飲食業などに携わる人たちの勉強の場で、食のプロたちが選ぶサラリーマンのランチとして、「泉州海鮮 きんちゃく家」はナンバーワンの栄誉を授かったのである。

弾けるような生シラスの食感に驚く

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さて、いよいよ料理が運ばれてきた。生シラス丼(780円)と釜揚げシラス丼(680円)、どちらも大きな丼にあふれんばかりにシラスが盛られていて、真ん中には生卵がトッピングされている。
さっそく、待望の生シラス丼に手を伸ばし、まずはスプーンで生シラスだけをたっぷりすくって、いただいてみる。

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まず驚いたのは、そのプリプリの食感だ。私が以前に食べたことのある生シラスは、もっと、水っぽい感じがして、こんなにシラス1尾1尾の存在を感じることができなかった記憶がある。
そっと噛んでみるとプチッと身が弾けて、やさしい甘みが広がる。魚特有の臭みも全くなく、新鮮な生シラスというものはこういう味わいだったのかと、衝撃を受けるほどの美味しさだ。

一方の釜揚げシラスは、真っ白でしっとりと柔らかく、ほどよい塩気とともに上品な白身魚のような美味しさがあふれる。改めてシラスを見てみると、普段食べているものよりも魚体が小さく、その大きさもきれいに揃っている。

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どちらもご飯と合わせると相当なボリュームだが、なんともいえない旨みに食欲は進む一方だ。そして最後には、崩さずに取っておいた生卵を混ぜ合わせ、ツルツルとした食感を楽しみながら、あっという間に完食してしまった。

目の前で水揚げされたシラスを手間暇かけて調理する

お腹がいっぱいになったところで、このシラスの美味しさの秘密を店長の土居弘明(どいひろあき)さん(40歳)に聞いてみた。

泉州海鮮 きんちゃく家では、毎日、向かいにあるシラスの入札所に出向き、納得できるシラスを選んで競り落としているという。入札場でカゴに盛られて並ぶシラスの中から、美しく透明度の高いものを選び出す。さらに、カゴの中のシラスを手にすくい上げ、身の大きさが揃っているか、小エビやカニなどの混じり物がないかなどを入念に見定めるのだそうだ。

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 “うちの店では、できるだけ小さなシラスを選ぶようにしてるんです。その方が、口の中に残らず美味しいと思ってもらえるから。それに、きれいな場所で獲れているものは、混じり物も少ないんですよ。”

そして、生シラスのあのプリプリとした食感は、土居さんの丁寧な下準備によって生まれているそうだ。

 “生シラスは水揚げされて間がなくても、水の温度が上がると鮮度がガクッと落ちるんですね。だからうちでは、氷を足した水で、水が澄んできれいになるまで、水を5〜6回替えながら洗っています。それによく洗わないと、魚の生臭さが残ってしまいますから。
釜揚げシラスについては、温度をきちんと保って、一気に湯がかないといけないんです。それは僕たちの店の設備では到底できないので、仕入れたシラスを信頼できる加工屋さんに届けて、釜揚げにしてもらってるんですよ。”

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「泉州海鮮 きんちゃく家」の営業は、今も港で働く人の時間に合わせて、午前5時から午後2時までだ。にもかかわらず、平日で100人以上、日曜日にもなると200人以上のお客さんが訪れる。
最近では注文が多すぎて、毎日仕入れをしていてもシラスの量が追いつかない日があり、土居さんはうれしい悲鳴をあげているそうだ。

大阪産の魚の美味しさを伝える店主の意気込み

「泉州海鮮 きんちゃく家」では、シラスを使った丼のほかにも、あなご天丼や海鮮丼などの丼ものや、煮魚定食、焼魚定食などが用意されている。もちろん、素材となる魚は、ほとんどが大阪湾で水揚げされたものだ。

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 “ひと昔前まで、大阪の海は汚いと思われてましたけど、今はきれいで水質も抜群なんです。湾になっていることで魚のエサが逃げにくいから、魚が育つための栄養価もすごく高いと評価されてますしね。だから脂ののりが、よその魚とは全然違うんです。もちろん、漁師さんも魚に傷を入れないように、細心の注意をしてはりますしね。
僕はずっと寿司屋をやってきましたけど、イワシにしても、アジ、サバにしても、今まで扱った魚の中でも、こんなにきれいで美味しい魚はないと思ってます。”

土居さんは、そんな大阪湾の魚の美味しさを、「泉州海鮮 きんちゃく家」から、自信を持ってアピールしていきたいという。

 “そのためにも、お客さんに喜んでいただける美味しい魚を、これからもっと探していきますよ。そして、味で、ボリュームで、お客さんを楽しく驚かせたいと思ってるんです。”

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「泉州海鮮 きんちゃく家」にとって、目の前にあるシラスの入札場は商売の要だ。一方の入札場にとっても「きんちゃく家」は、私たち一般人に「大阪産」の魚の美味しさを伝えてくれる、サテライトショップのような存在に成長した。
そしてこれからも、双方がしっかりとした協力関係で大阪の漁業を盛り上げながら、ますます、岸和田漁港の賑わいを増していくことだろう。

〈写真提供〉※1-2 泉州海鮮 きんちゃく家

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泉州海鮮 きんちゃく家

大阪府岸和田市地蔵浜町7-1
最寄り駅:南海本線 蛸地蔵駅より徒歩約20分
[営業時間]5:00〜14:00 [定休日]水曜日
TEL :072-436-3866