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南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

環境保全活動を通して
大阪湾をもっと身近な海へ

2016.04.20

最寄り駅:南海本線 鳥取ノ荘駅

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[CAN 特定非営利活動法人 環境教育技術振興会 岩井克巳さん]

昭和30年代頃まで、大阪府内の沿岸には数多くの砂浜や干潟が残り、人々は、海水浴を楽しんだり魚を捕まえたりと、今よりも密接に大阪湾とつながっていた。
また、大阪の古称である「浪速」は、大阪湾が「魚庭(なにわ)の海」と呼ばれていたことが語源だとも言われるほど、たくさんの魚が生息する豊かな環境をたたえていたのだ。

そんな昔のような大阪湾を再生しようと活動している人たちは数多く、今では、市民やNPOをはじめ、研究機関や大学、民間企業、行政機関など、約170の個人や団体がゆるやかにつながるネットワークも生まれているほど。

今回話を伺った、岩井克巳(いわいかつみ)さん(50歳)もまた、大阪湾の現状を何とかしたいと考え、NPO団体を通じて、アマモ場の再生などの環境保全活動に取り組んでいる一人である。

アマモ場は、魚たちの安らぎの場所

 “アマモは、水深が2メートル位までの、海の浅場にある砂地で育つ海草の一種でね。光合成をして酸素を出すので、アマモが広く群生するアマモ場は、青潮などが発生して水中が貧酸素になった時には、魚の避難場所になると言われています。

それだけじゃなく、稚魚にとってアマモの茂みの中は隠れやすく、葉に付いたプランクトンがエサにもなるので、魚の産卵・育成場に適しているんですね。また、稚魚を追って大きな魚も寄ってくるから、アマモ場は、海の生態系を形成するうえでも、非常に良い環境を提供してくれるんですよ。”

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ところが、かつてはアマモ場がいたる所に広がっていた大阪湾で、その姿はほとんど見られなくなったという。
高度経済成長の時代に、沿岸部でのコンビナート建設が進み、アマモが生息していた浅場の海は必然的に埋め立てられてしまったのである。

大阪湾にもわずかに残っていたアマモ

海洋調査や環境コンサルティングなどを行う会社に務め、仕事でも、海とは深い関係にある岩井さん。アマモ場の再生活動を始めたのは、現在、岩井さんが理事を務めるNPO団体「CAN(キャン=正称:環境教育技術振興会)」との出会いがきっかけだったそうだ。

 “CANは、もともと関西のダイバーたちが、海をきれいにしたいという思いで集まった団体で、ダイビングの拠点となる和歌山の海で、海底清掃活動などを行っていたんです。
ある時、彼らから「大阪湾でも、自分たちに何かできることはないだろうか」という相談を受けましてね。それで、大阪湾をダイビングスポットにもなるような魅力的な海にするために、アマモ場再生に取り組んでみよう、という話になったんですよ。”

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そこで、まずは大阪湾の現状を調べようと、海中に潜って湾内調査を始めた岩井さんたちは、貝塚市の二色浜で大きなアマモの群生地を発見。大阪の海から姿が消えたと思っていたアマモが自生していたことに驚きつつ、生育観察を数年間続けていたところ、今度は、阪南市の西鳥取で、二色浜よりもさらに大きく、まだまだアマモが増えることのできる環境を残している群生地と出会うことに。
そして8年前。西鳥取小学校の教師から、「子供たちが身近な海について学ぶ協力をしてほしい」との声掛けもあり、阪南市から岬町にかけて広がるせんなん里海公園周辺の海辺で、子供たちの環境学習を兼ねた、アマモの育成・移植活動が本格的に始まったのだという。

子供たちとともにアマモを育てる

岩井さんたちとともに、アマモを大切に育てているのは、西鳥取小学校の2・3年生の生徒たち。
まずは6月末、花を咲かせ種ができたアマモを採取することからスタート。干潮時にみんなで海に入り、アマモの花枝をひとつひとつ摘み取っていくのだ。そして、摘み取った花枝を水槽内で、8月頃まで熟成させた後、枯れてしまった葉や茎の部分を取り除き、種をひとつずつ取り出していく。

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10月になると、今度は種を使って苗床を作り、室内でアマモの苗を育成。そして翌年の3月、元気に育ったアマモは、ダイバーたちの手によって海中に移植されるのである。

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“本当は、最後のアマモの移植まで、子供たちの手でさせてあげたいんですが、その時期はまだ寒いうえに、夜にならないと海の潮が引かないから危険なのでね。でも、最初の花枝の摘み取りから、苗床でアマモを育てるまで、みんな、楽しみながら頑張ってくれていますよ。
こうしてアマモ場を再生しながら、将来を担っていく子供たちに環境保全の大切さを伝えることができるのは、本当にうれしいことですよね。”

そして毎年活動を続けることで、アマモの数は少しずつ増えていき、現在、西鳥取の海には、アマモ場と認められる1ヘクタール近くにまで群生地が広がったそうだ。

大阪湾をもっと身近に感じてほしい

岩井さんは、アマモ場の再生活動のほかにも、CSR活動(=社会貢献活動)を行う企業を巻き込んだ、大阪湾での生き物調査などを開催。また、一般の人を対象に、西鳥取での海苔作りに米作りをコラボさせた体験イベントなどにも取り組んでいる。

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 “大阪湾は、間違いなく豊かな海です。なのに今では、一般の人たちが大阪湾に関わる事って、ほとんどないんですね。昔の人は、日常生活の中で様々に大阪湾と関わりを持っていたのに、それがスポッと断ち切られてしまっている。
僕たちがこういう活動をしているのは、昔みたいに海とつながるためにも、多くの人に、ちゃんと大阪湾を見て、関心を持ってもらいたいからなんです。だから、大阪湾に来て、ふれて、味わうことのできる体感型イベントを、これからも、いろいろと考えていきたいと思っているんですよ。”

岩井さんが言うように、数十年という年月の間に、私たちにとって、大阪湾は、近くても遠い存在となってしまったのかもしれない。
潮風が心地よい今の季節、行楽気分で大阪湾を訪れてみてはいかがだろう。海辺でのんびり過ごしたり、漁港の朝市で買い物をしたり。そんな小さな楽しみを見つけるだけでも、大阪湾は不思議なほどに親しみやすい存在になるはずだ。

〈写真提供〉※1-4  CAN 特定非営利活動法人 環境教育技術振興会 岩井克巳

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CAN 特定非営利活動法人 環境教育技術振興会(事務局)

www.npo-can.org/