SUI

南海沿線にある漁港および周辺地域の魅力を伝えるウェブマガジン

泉南市役所職員と市民グループ等による
新たな挑戦(前編)

2015.10.07

最寄り駅:南海本線 岡田浦駅

_MG_0339

関西国際空港の対岸部に位置するりんくうタウンは、平成6年の空港開港に伴い、地域の振興を掲げて産声をあげた泉南市の新しいエリアだ。

海辺には美しい人工海浜施設も整備されており、南海本線「岡田浦駅」から西に歩くと、純白の大理石を敷きつめた「マーブルビーチ」。そして「樽井駅」から西に歩くと、ウミガメが産卵に訪れる海水浴場として話題の「サザンビーチ」が広がっており、海辺のまちにふさわしい、景観を楽しむことができる。

また、ハマヒルガオが群生する自然の砂浜や、港情緒あふれる風景の中で漁業体験ができる岡田漁港などもあり、大阪湾の観光集客スポットとしての大きな潜在力を秘めている。

そんな、りんくうタウンの「海」をテーマに、泉南市の魅力を発信しようという取り組みが、多くの自治体で注目されている。それが大阪ミュージアム構想に認定されている「りんくう海道ブルーツーリズム事業」である。

海の保護活動をイベントとして楽しむ

大阪ミュージアム構想は、大阪府内各地にある魅力的な資源を国内外に発信することを目的として、大阪府が推進している事業である。この事業を受け、泉南市が大阪府に申請したのが「りんくう海道ブルーツーリズム事業」の取り組みで、昨年度に引き続き、今年も大阪府から認定を取得した。

「りんくう海道ブルーツーリズム事業」のコンセプトは、美しい海の保護活動を夏のイベントとして楽しむこと。今年は「ハマヒルガオ群生地の清掃活動」「ウミホタル観察会」そして「サンセットフェスタ」の3つの催しが順次行われた。

まず第1弾として行われたのが「ハマヒルガオ群生地の清掃活動」。ハマヒルガオは、マーブルビーチに隣接した砂浜に群生しており、初夏の頃には可愛い花が咲き誇る。当日は、その砂浜を清掃するとともに、ハマヒルガオの生育を蔓でおおって阻害してしまう雑草の駆除に、市民たちが汗をかきながら奮闘したという。

966722_342473062545461_381820452_o※1

第2弾は「ウミホタル観察会」。ウミホタルは、大阪湾では泉州地域でしか見ることができないと言われている小さな甲殻類の生物で、青く発光することからその名前が付けられているそうだ。観察会には、100人以上にもおよぶ人が参加。専門家から生態の解説を聞いた後には、実際にウミホタルを自分の手のひらの上にのせ、美しく光る「奇跡の蒼色」といわれる姿を楽しんだ。

そして、第3弾として8月最後の土曜日に行われたのが「サンセットフェスタ」。マーブルビーチの清掃を行った後、美しい夕陽を背景に、市民グループによる音楽やダンス、地元の魚介を使ったグルメなどを楽しむイベントだ。ビーチの清掃には300人もの有志が参加。イベントを楽しみに訪れた人たちによって動員人数はさらにふくらみ、目の前に広がる泉南の海の素晴らしさを広く発信する機会となった。

thumb_IMG_8286_1024

こうして、夏の間に及んだ「りんくう海道ブルーツーリズム事業」は、今年も、多くの人を楽しく巻き込みながら、海への感謝の思いとともに終了したのである。

市民の声から実現した「りんくう海道ブルーツーリズム事業」

 “ブルーツーリズムは、もともと、岡田浦漁協さんが提案してくれたものなんですよ。岡田浦漁協さんは、以前からハマヒルガオの保全活動を熱心に行ってくださっていて。「砂浜の環境整備をテーマにして、大阪ミュージアム構想に申請できないだろうか?」と私たちに持ちかけてくださったんです。”

そう話してくれるのは、泉南市産業観光課 商工労働観光担当の桐岡秀明(きりおかひであき)さん(46歳)。市職員として「りんくう海道ブルーツーリズム事業」を中心になって取りまとめている人物である。

_MG_2613

桐岡さんは、岡田浦漁協から提案を受けた時、府の認定を受けるためには、もっと訴求力のあるストーリーが必要になると考えたそうだ。
そして、いろいろと策を思いめぐらした末に着目したのが、ハマヒルガオの保全活動に加えて、8年前から市民に親しまれているイベント「サンセットフェスタ」だったという。早速、主催する市民グループに参加を呼びかけてみたところ快諾を得ることができ、これらの取り組みを中心としたブルーツーリズムのプランが、トントン拍子にまとまっていったのだという。

_MG_0318

“泉南市の海沿いには、昔ながらの豊かな自然がまだまだ残っています。その一方で、マーブルビーチのような新たな資源が生まれています。そして、その両方が海の道によってつながれている。そういう意味合いを込めて「りんくう海道」と名付けたんです。”

市民協働を観光の活性化につなげたい

 “まちづくりは、市民さんが主体に推進してくださるものの方がうまくいきます。僕たち行政がやろうとすると、制約がいろいろと入ってくるし、アイデアも枠の中にはめられたものしか出てきませんからね。
僕たち行政の仕事は陰から支えること。市民さんからの提案をしっかり聞いて、その一生懸命な気持ちに応えることじゃないでしょうか。”

_MG_2612

桐岡さんは、市民協働から生まれるまちの魅力を、泉南市の観光につなげていきたいと考えている。そして、そういった意味でも、「りんくう海道ブルーツーリズム事業」は、理想に近いあり方だともいう。

 “観光の先進地って、東京や海外にまでPR展開をしていたり、僕らのレベルからは考えられないほど取り組みの規模が大きいんですよね。でも、僕が泉南市の産業観光課の一員として目指したいのは、「背伸びをしない観光地」なんです。市民さんが盛り上がって楽しんでいることが話題を呼んで、他の地域からも人が来てくれる。そんな観光のあり方を探っていきたいんです。”

泉南市の魅力は、美しい海や山の自然が豊かにありながら、国際空港を抱えていることだと桐岡さんは話す。そして、そんなユニークさを生かして「田舎の国際都市」としてのまちづくりを進めていきたいそうだ。

1275089_579657322160366_7677690746904518034_o※2

 “関空にはLCCも乗り入れるようになったし、これから、関空を利用する外国人もますます増えて行くことでしょう。そんな人たちが泉南市に観光で立ち寄ってくれるようになれば、本当に嬉しいですよね。
そのためには、これからも市民さんといろんなアイデアを共有して、関西の玄関口としての、おもてなしのプラットホームをきちんと築いていかなくてはいけませんね。”

「背伸びをしない観光地」「田舎の国際都市」をめざして。「りんくう海道ブルーツーリズム事業」は、ますます充実した取り組みとして成長していくのだろう。
そして、大阪はもちろん、日本の海を守るために、ブルーツーリズムのような取り組みが、熱意ある市民や行政職員たちによって、全国の海辺のまちで生まれるのも、そう遠くはない日のことではないだろうか。

〈写真提供〉※1-2 泉南市役所

(→後編に続く)

<田尻漁港の『… 岡田漁港の記事岸和田の魚を…>

okada

りんくう海道ブルーツーリズム事業

URL:http://www.city.sennan.osaka.jp/seisaku/museum/rinkuukaidou.htm