南海本線「岡田浦駅」から徒歩で約10分。付近には自然の砂浜もあり、のどかな漁村の雰囲気を現在に残す岡田漁港は、大阪府下では数少ない、ワカメの養殖を行っている漁港だ。
「SUI」では、昨年の晩秋に、この漁港で一般の人に向けて行われた、「ワカメの苗付け体験」の様子を紹介させてもらった。(ワカメの苗付け体験の記事はこちら→)
そして、あれから4ヵ月近くが経ち、イベントの主催者である「大阪から明るい水産業を創る会」の白川光広(しらかわ みつひろ)さん(50歳)から、いよいよワカメが収穫の時期を迎えたという知らせが。
苗付けの時、まだ発芽から間もなかったワカメの種糸(=糸に付着させた幼葉)はどのように育ったのだろう?ぜひとも成長を見届けようと、再び岡田漁港へ足を運んだ。
期待がふくらむ、ワカメの収穫体験
今回、「ワカメの収穫体験」に集まったのは、子供連れの家族など約30名。苗付け体験の時にお会いした人たちとも久しぶりの再会だ。
また、噂を聞きつけて、初めて参加したという人も多く、中には、海のない地元では体験できないイベントを楽しもうと、奈良県からやってきた人も。
みんなの装いは、長靴にジャンパーと準備万端で、この日を心待ちにしていたことが伝わってくる。
白川さんによると、この冬は、秋からなかなか水温が下がらなかった影響を受けて、西日本全体でワカメが育つのが遅かったとのこと。岡田漁港でも、例年より1ヵ月も遅れて、2月下旬頃から刈り取りが始まったそうで、残念ながら今の時点では、ワカメの大きさも少し小振りなのだという。
しかし、本格的に春風が吹き始めた今の季節、ワカメは海の中でグングンと育っているはず。まだ1ヵ月以上もある収穫期を終えるまで、どれほどのワカメが水揚げされるのか、楽しみはこれからだ。
沖にあるワカメの養殖場へ出発
漁師さんが用意してくれた漁船に乗り込み、まずはワカメの養殖場見学へ。港から沖へ1キロほど進むと、ワカメを苗付けした親縄が整然と並ぶ縄筏(なわいかだ)が見えてきた。まるで海に浮かんだ畑のように見える縄筏は、10本から15本のワカメの親縄をロープでつなぎ、その周囲をブイで固定したもの。1つがおよそ150平方メートルもあり、海の上にいくつもの縄筏が並ぶ姿は、とても壮観だ。
さらに沖の方には、ワカメの収穫を行う漁船が。船には、大きな回転ドラムのような機械が付いており、長さが50メートル以上ある親縄を、そのドラムに巻き付けながらワカメを刈り取っていくのだという。そして1本の親縄からは、多い時では、400キロにも及ぶワカメが収穫されるそうだ。
1.5メートル近くにまで育ったワカメ
漁港に戻ると、早速、白川さんが、水揚げされたばかりのワカメを見せてくれた。それは、遥かに想像を超える大きさで、苗付けの時は3センチほどだったワカメの種糸が、わずか数カ月の間に1.5メートル近くにまで成長している。さらに1つの種糸からは、何本ものワカメが重なりながら伸びているのだ。
また、根元近くには、厚い葉がひだのように重なり合い、大人の握りこぶしほどもある球形になった部分があり、これが俗に言われる「めかぶ(=胞子葉)」なのだという。
めかぶは、普段から親しみのある食材なのに、実を言うと、ワカメの一部であることを今回の体験まで知らなかった。また、市場で細かく刻んで販売されている加工品しか見たことがなかったので、原形が、こんなにも複雑な形をした、葉の塊だとは思いもよらなかった。
大きさといい、形状といい、初めて目にする自然の姿のままのワカメは、新鮮な驚きがいっぱいだ。
みんなで下処理に挑戦
大きく成長したワカメをひとしきり観賞した後は、刈り取って食べてみることに。ワカメは、根元部分の茎に包丁の刃を入れると、サクッと簡単に刈り取ることができる。そして、参加者の手で、次々に親縄から切り離され、あっという間に、100本以上もあるワカメの山が出来上がった。
続いて、水洗いしたワカメを、1本ずつ、まるごと熱湯を湧かした大きな鍋の中へ。すると一瞬にして、茶色かったワカメが鮮やかな緑色へと変わり、その様子を見ていた子供たちは「魔法みたいや!」と、目を丸くして大喜びしている。
こうして、数秒のうちに茹であがったワカメを細かく刻んで、いざ試食。コリコリとした歯応えと、程よい粘り気、そして、ほのかな磯の風味が口の中に広がって、獲れたての旬の味わいは、思わず顔がほころんでしまうほどの美味しさである。
ワカメとともに、大阪湾の魅力を味わう
“ワカメは、生のまま冷凍で保存できるので、食べたい分だけ冷凍庫から取り出して使うといいですよ。葉は、サラダやしゃぶしゃぶで。茎の部分は、短冊切りにして市販の煮魚用のタレで炊くと、手軽に佃煮が出来ます。めかぶは、栄養価が一番高い部分。細かく刻んで、ぜひ、そのままで食べてくださいね。”
最後に白川さんが、そう言いながら、刈り取ったワカメをお土産として渡してくれた。
苗付けから、こんなに大きくなるまでを見届けたワカメは、愛おしさも、美味しさも格別。いろんなワカメ料理にして、大切に味わいたいと思う。
収穫体験がすべて終了した後、別れ際に、今回参加していた女性が、こんなことを話してくれた。
“ずっと泉南で育ってきたけれど、これまで大阪湾に興味を持った事はなかったんです。今日、初めて漁港に来て、こんな体験をさせてもらったんですが、大阪の海って、こんなに素晴らしかったんですね。”
漁村での営みにふれながら、大阪湾を身近に感じることができた「ワカメの養殖体験」。白川さんや岡田漁港の皆さんは、これからも様々な体験イベントを通して、多くの人たちに、大阪湾の魅力を発信し続けてくれることだろう。
大阪から明るい水産業を創る会
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[お問い合わせ先]wakame02@gmail.com
岡田浦漁業協同組合
大阪府泉南市岡田りんくう南浜
最寄り駅:南海本線 岡田浦駅より徒歩約10分
[受付時間]9:00〜17:00 [定休日]水曜日・日曜日
TEL :072-484-2121
URL : http://okadaura.org