【ゲスト:6次産業化プランナー 片桐新之介さん】
日本は周囲を海に囲まれた島国。特に海に面した地域では、昔から魚はとても身近な食材だ。しかし近年、全国的に見ても「魚離れ」が進んでいる。その主な理由は、さばくのが面倒、生ゴミの処理に困る、肉類と比べると単価が高い、といった様々な要因が挙げられる。
そして、身近なところに目を向けてみると大阪湾でも同じ状況が見られる。大阪府下には13もの漁港があり、堺市以南の泉州地域ではいまでも活発に漁を行っている。この地方では地元の人から「がしら(カサゴ)」「がっちょ(メゴチ)」「した(イヌノシタ)」「しゃこ」と呼ばれる、珍しくて美味しい魚が流通する。ところが「大阪府豊かな海づくりプラン等の改定」に関するアンケート(大阪府環境農林水産部水産課 調査)では、大阪湾で獲れた魚介類を食べたことがあると答えた人は全体の3割、という寂しい結果が出ており、もったいない限りだ。
甘みがあって柔らかい。泉だこってこんなに美味しい!
大阪府下で水揚げされるこうした魚は、歴史と伝統のある名品を集めたブランド「大阪産」(おおさかもん)に認定され、地元の産直市場や漁港の朝市などをはじめ、築地や海外でも販売されている。平成22年の5月、その「大阪産」に新たに「泉だこ」が加わった。「泉だこ」は「大阪府の泉州沖で獲れるマダコをボイルしたもの」という定義で、何とタコとしては初めての認定となった。
しかし、タコといえば、淡路島と明石市の間にある明石海峡で水揚げされる「明石だこ」の方が有名だ。播磨灘で育つ「明石だこ」と、大阪湾で育つ「泉だこ」。両者が育つ海はそう離れてはいないが、味はどう違うのだろう?
“「明石だこ」は潮の流れがきついところで育つので、身が引き締まってコリコリした食感。でも「泉だこ」は比較的潮の流れが緩いところで育つので、身が柔らかく甘みがあって美味しいんですよ。”
そう教えてくれたのは6次産業化プランナーの片桐新之介(かたぎりしんのすけ)さん(38歳)。片桐さんは、元は百貨店の鮮魚部門に勤務し、魚をさばいたり、刺身に加工するなどの調理や市場での魚の買い付けを担当していた。ある日、お客さんが店頭に並ぶアジを指さして「このサバ、調理して」と言ったのをきっかけに、消費者が食べ物についてあまり意識していないことを痛感。「日本の食文化をもっと豊かにしたい」と熱い思いを抱いて10年あまり勤めた会社を退職した後、2011年に飲食店コンサルタントとして独立。現在は、6次産業化プランナーとして農業や漁業体験ツアーを数多く企画し、消費者と生産者をつなぐ活動を続けている。
今回は、そんな魚の扱い方を熟知する片桐さんをゲストに招き、美味しい「泉だこ」の調理法を伝授してもらった。